OSAWA TATSUO

 

大澤辰男、osawa tatsuo

 

大澤辰男 その作品とは、

 

 私が最初に美術家を目指したころは、風景を描いていました。工場や田園の風景でした。しかし、風景のようにイメージが先行する絵画に疑問を感じました。たとえば夕焼けを描いた風景なら、もの寂しい感じになったり、郷愁をさそったり、青空の風景を描けば、晴れやかな気持ちになったり、爽やかになったり…。誰もが持つ共通のイメージを突き破ることがとても困難に感じました。そして風景を簡略し、構図に凝った作品を描き始めました。
 イメージから脱却するために作品の試行錯誤を繰り返している頃、大阪梅田の地下街を歩いている時でした、長い壁が続いている通路に大きな通風孔がありました。覗いてみると通風孔の桟の向こうに薄暗い大きな空間があります。「この空間にはどこから入るのだろうか?」と壁を見渡したところ、どこにも入口らしいものはありません。どうやらその通路からはその空間には入れないようで、どうやら空間の向こうに入口がある構造のようでした。こちらから覗けるのに入って行けない空間が面白いなと思い、その通路を通る時は、必ず足を止めてその通風孔を眺めていました。知らない人が見るときっと奇妙な人だと思われたと思います。
 ある日ふとこの通風孔の構造は絵画の構造だと気が付きました。「入って行けない空間」ただ眺め、眼でしか確認することができない空間。
 まさしく、それは絵画で、自分の居る現実の世界と向こう側の世界でした。様々な試行錯誤を繰り返し、新しい絵画を描きたいと思っていた私にとっては、大発見でした。そして、いっそのこと通風孔を絵画にしてしまおうと考え様々な通風孔を見て廻り、あるビルの通風孔をモデルにしました。それは、横の桟が数十本あり真中に一本の桟がある通風孔です。桟の幅は約3ミリ、桟と桟の間隔は9ミリでアイボリー色のプラスチック製です。作品では、黒いニスを何層も塗り、それをピカピカに磨き、その上に数十本の3ミリ幅と9ミリ幅の線を引き9ミリの部分にマスキングをし、その上からアイボリー色の油絵具を3ミリの厚さで塗り、すかさずマスキングテープをはがします。するとモデルのような通風孔の作品ができあがります。まるで通風孔の模型です。桟にあたるアイボリー色の3ミリ幅で3ミリ盛り上がっている絵具の部分が現実の世界、黒いニスの部分が通風孔の空間の部分にあたります。イメージは前述のような風景ではなく、何の思い入れもないただの通風孔、ただ絵画空間が存在する作品です。そのような作品を5、6年制作し続けましたが作品は線のバリエーションとなって行き次第に新しい作品を探り始めました。
 そして、今の作品にたどり着いたきっかけは、仕事の帰りに見る夕刻のビル群でした。窓ガラスに映る夕焼けを見た時、不思議な感覚を覚えました。「自分は今夕焼けを見ているのか?窓ガラスを見ているのか?」窓ガラスに映る夕焼けは振り返って見た夕焼けとは色彩も違い、距離感もまったく違い、そして窓ガラスの質感もあるのですが、とてもあいまいな物質に感じました。窓ガラスに映った夕焼け、それは窓ガラスでもなく、夕焼けでもありません。夕焼けの美しさでもなく、ガラスが持つ透明感でもなく、別の何かに変容していました。物質性が持つ強さと透明感、そして色彩が混然となった名前のついていないものです。たとえばピカピカに塗装された車のボンネットに映える光線も同じでしょう。人は、そのような形容しがたいものに魅力を感じ、惹かれたりします。人は物質性の中にある種の美しさとイリュージョンを感じることができます。
 それを具現化するための方法を、どうしたらいいのか迷っていた時、その悩みを解決してくれたのが前述の自身の作品の黒いニスの方法でした。作品が次に作る作品を教えてくれます。ニスには光沢と透明感、物質感も兼ね備わっています。そして黒色ではなく、着色したニスを使用することを思いつきました。寝かしたパネルの表面に着色したニスを表面張力が張るよう何層も流していきます。流しては磨き、流しては磨きを、多い時で20回ほど繰り返します。どのような色彩にするかはある程度コントロールできるのですが、立ち上がって来る模様は自分ではあまりコントロールできません。ある部分、偶然が作用します。その偶然性が私だけのイメージや世界観に固まってしまうのではなく、観る人のイメージが作品に自由に入って行けるのだと思います。そして、作品を観る人が自身のイメージを作品にあてはめることで、ある意味作品が完成するのだと思います。それができるのは、夕焼けでもなく、窓ガラスでもないことと同じで、未だ共通のイメージを持たない新しいモノ(絵画)だからです。
 私の作品は、物質性とイリュージョンとの融合にあります。性質の違う二つが融合した時に新しい価値観、世界観が出来上がるのではないか?ふだん眼にするものがイメージに囚われて見失われていることがあるのではないか?そのようなメッセージを絵画という見える形で生み出していきたいと思っています。

 

 

about OSAWA TATSUO

大澤辰男、osawa tatsuo

 

大澤辰男

 

1969 ◼ 大阪生まれ


1989 ◼ 大阪芸術大学付属大阪美術専門学校美術工芸学科絵画専攻 卒業


1990 ◼ 大阪芸術大学付属大阪美術専門学校研究科 終了


 
1992 ◼ 個展(信濃橋画廊5 大阪)


1993 ◼ 個展(信濃橋画廊5 大阪)


1994 ◼ 個展(信濃橋画廊エプロン 大阪)


1995 ◼ 個展(信濃橋画廊エプロン 大阪)


1996 ◼ 個展(信濃橋画廊エプロン 大阪)

美術手帖1997年1月号展評

 

1998 ◼ 個展(信濃橋画廊エプロン 大阪)

 ◼ ART UP! ー揺籃する位置ー(大阪府立現代美術センター 大阪)(Xaロードサイドミュージアム 広島) (ギャラリーぐうて 広島)(神戸アートビレッジセンター 神戸)


1999 ◼ 個展(信濃橋画廊5 大阪)

 ◼ 個展(シティーギャラリー 大阪)


2000 ◼ 記憶の周辺(信濃橋画廊 大阪)信濃橋画廊5 大阪

◼ 三浦市現代美術展「半島Ⅰ」(神奈川県三浦市)


2001 ◼ UNEASINESS(信濃橋画廊 大阪)


2002 ◼ 個展(信濃橋画廊 大阪)

 ◼ 個展(シティーギャラリー 大阪)


2003 ◼ UNEASINESSⅡーPRESENTATION-(信濃橋画廊 大阪)

 ◼ 個展(信濃橋画廊 大阪)


2004 ◼ 個展(シティーギャラリー 大阪)

 ◼ フラット・プラットーThe Far West Near East(神奈川県民ホールギャラリー 横浜) (海岸通ギャラリーCASO 大阪) ◼ 個展(シティーギャラリー・ホワイトキューブギャラリー 大阪)

 ◼ 個展(信濃橋画廊大阪)


2005 ◼ UNEASINESSⅢ(信濃橋画廊 大阪)

 ◼ 温故知新 (シティーギャラリー・ホワイトキューブギャラリー 大阪)
 ◼ City_net Asia 2005(ソウル市立美術館 韓国)


2006 ◼ 個展(信濃橋画廊・信濃橋画廊5′大阪)

 ◼ ART WEFERSー21世紀絵画の重層性ー(海岸通ギャラリーCASO 大阪)

 ◼ UNEASINESSⅣ(信濃橋画廊 大阪)


2007 ◼ 個展(信濃橋画廊大阪)

 ◼ MOVING EYES (海岸通ギャラリーCASO 大阪)

 ◼ UNEASINESSⅤ(信濃橋画廊 大阪)

 ◼ Iternational Exchange Project Japanese Young Artists TRAIAL Painting―日本の若き画家達の挑戦― (Modern Culture Center<MCC> イチョン市 韓国) 

 ◼ UNEASINESSⅥ(2Bギャラリー ブダペスト ハンガリー)

 ◼ 架空通信「百花繚乱」展(兵庫県立美術館ギャラリー 神戸)


2008 ◼ 個展(信濃橋画廊・信濃橋画廊5’ 大阪)

 ◼ Your Documents Pleaseーパスポートお願いしますー (伊丹工芸センター 兵庫)

 ◼ UNEASINESSⅦ(信濃橋画廊 大阪)


2009 ◼ 個展(信濃橋画廊エプロン 大阪

 ◼ UNEASINESSⅧ(Igong Gallery テジョン市 韓国)  

 ◼ UNEASINESSⅨ(信濃橋画廊・信濃橋画廊5 大阪)  

 ◼ hypertension with uneasiness(海岸通ギャラリーCASO 大阪)

 ◼ NET WORK 21c(hall of Korea sori moon hwa 全州市 韓国)

   
2010 ◼ UNEASINESSⅩ(信濃橋画廊 大阪)

 ◼ 個展(信濃橋画廊 大阪)

 ◼ NET WORK 21c(hall of Korea sori moon hwa 全州市 韓国)


2011 ◼ HICA2011(Igong Gallery 大田市 韓国) 

 ◼ KIAF2011-KOREA INTERNATIONAL ART FAIR-(COEX ソウル 韓国)

 ◼ NET WORK 21c(hall of Korea sori moon hwa 全州市 韓国)


2012 ◼ KIAF2012-KOREA INTERNATIONAL ART FAIR- (COEX ソウル 韓国)

 ◼ NET WORK 21c(hall of Korea sori moon hwa 全州市 韓国)

 ◼ HICA & UNEASINESS (Igong Gallery 大田市 韓国)会場風景installation view


2013 ◼ UNEASINESS11(2kw gallery 大阪)   

 ◼ UNEASINESS & HICA (gallery北野坂 神戸)会場風景installation view

 ◼ 個展(2kw gallery 大阪)

 ◼ 個展(Gyo Dong Art-Studio全州市 韓国)

 ◼ NET WORK 21c(hall of Korea sori moon hwa 全州市 韓国)


2014 ◼ UNEASINESS12(2kw gallery 大阪)
 ◼ NET WORK 21c(hall of Korea sori moon hwa 全州市 韓国)


2015 ◼ UNEASINESS13(2kw gallery 大阪)

 ◼ 中・韓・日美術作品交流展(東北電力大学 芸術学院 吉林省 中国)


2016 ◼ UNEASINESS14(2kw gallery 大阪)

◼ UNEASINESS15(GYO DONG ART MUSEUM 韓国)

会場風景installation view

 

 

 兵庫県立美術館所蔵

大澤辰男、osawa tatsuo

 

Osawa Tatsuo C.V.

 

1969 ◼ Born in Osaka, Japan


1989 ◼ Graduated from the major of Arts and Crafts at Osaka College of Art


1990 ◼ Graduated from the graduate course of Arts at Osaka College of Art

 

 

2016 ◼ "UNEASINESS14" 2kw Gallery, Osaka, Japan


2015 ◼ "CHINA KOREA JAPAN ART EXCHENGE EXHIBITION" College of Art Northeast Dianli University, JilinProvince, China

 ◼ "UNEASINESS13" 2kw Gallery, Osaka, Japan


2014 ◼ “NET WORK 21c” Jeonjoo, Korea

 ◼ "UNEASINESS12" 2kw Gallery, Osaka, Japan


2013 ◼ “NET WORK 21c” Jeonjoo, Korea
 ◼ Solo Exhibition  Gyo Dong Art-Studio, Jeonjoo, Korea
 ◼ “UNEASINESS & HICA” GALLERY Kitanozaka, Koube, Japan installation view ◼ Solo Exhibition  2kw gallery, Osaka, Japan

 ◼ “UNEASINESS11” 2kw gallery, Osaka, Japan


2012 ◼ “NET WORK 21c” Jeonjoo, Korea
 ◼ “KIAF2012” Seoul, Korea


2011 ◼ “NET WORK 21c” Jeonjoo, Korea

 ◼ “KIAF2011” Seoul, Korea

 ◼ “HIKA” Daejeon , Korea


2010 ◼ “NET WORK 21c” Jeonjoo, Korea

 ◼ “UNEASINESSX” Shinanobashi Gallery, Japan

 ◼ Solo Exhibition  Shinanobashi Gallery, Osaka, Japan

 ◼ Public Collection   Hyogo Prefectural Museum of Art

 

 

大澤辰男、osawa tatsuo

 

作品について 大澤辰男

 

たとえば、人は、夕暮れ時の街のビル群の窓に映る夕焼けを見た時、美しいと感じるだろう。 しかし、人はその時、ビルの窓を見ているのだろうか?夕焼けを見ているのだろうか?

 

たとえば、人は夜の川面に映る街の灯りを見た時、美しいと感じるだろう。 しかし、人はその時、川面を見ているのだろうか?街の灯りを見ているのだろうか?

 

たとえば、ガラスに映る、自分を見た時、それは自分を見ているのだろうか? ガラスを見ているのだろうか?それともガラスの向こうにある景色を見ているのだろうか?

 

その時、人は、

ビルの窓を見ているのでもなく、

夕焼けを見ているのでもなく、

川面を見ているのでなく

街の灯りを見ているのでもなく、

自分を見ているのでもなく、

ガラスを見ているのでもなく、

ガラスの向こうの景色を見ているのでもない。

それらが等価値となった何かを見ているのだ。

それは、まだ名もない新しい何かなのかも知れない。

それは、無意識の中にある何かなのかも知れない。

私は、その何かを作っている。色彩、透明性、物質性、光沢性。

それらが等価値に存在する時、新しい何かに変貌する。

私の作品は、無意識を、見るという行為によって意識化させるのだ。 

 

 

 

大澤辰男、osawa tatsuo

 

About my works  Tatsuo Osawa

 

We may feel it is beautiful when we see a sunset reflected on the windows of the building group of the town in the evening.

 

At the moment, are our eyes actually catching the sunset, or the windows of the buildings?

 

We may feel it is beautiful when we see the lights of the town reflected on the surface of a river at night.

At the moment, are our eyes actually catching the lights of the town, or the surface of a river?

When we look at ourselves reflected in a glass, are our eyes actually catching ourselves?

The glass? The scenery over there?

 

What our eyes are catching at the moment

is not the windows of the buildings,

not the sunset, not the surface of a river,

not the lights of the town, not ourselves,

not the glass,

and not the scenery over there.

 

It is something which equally they all exist in.

It may be something new and nameless. It may be something in the unconsciousness.

 

I make the “something”. Color, transparency, materialness, gloss.

When they are in perfect equivalence, they change into something new.

My works make you conscious of “unconsciousness” by an act to “watch”.